成功と失敗の法則

 過去の「うまくいったパターン」を振り返って、そこに共通する法則性を整理してみる。

 多くの仕事は「具体的施策」の依頼から始まるが、「納品して終わり」といった手離れの良いケースは滅多にない。発注元の「費用対効果」をプラスに転じさせるには運用面の課題も解決する必要があり、プロジェクトとしてはむしろそこからが本番になる。
 企画や施策を「考えてほしい」といった依頼の先には「教えてほしい」「一緒に解決してほしい」「手を貸してもらいたい」などの潜在的な要望がある。(弊社の定款で筆頭の業務内容を「マネジメント支援」にしたのは、そういった要望に応えたい想いからだった。)

 プロジェクトがうまくいかない原因は、突き詰めると「意識」の問題に辿り着く。精神論と揶揄される所以だが、関係者に対する啓蒙や教育研修の必要性を感じることが多かった。
  「理念」 や行動基準、それに連動する「評価軸」 の確認などから「日々の働き掛け」だけで目に見える変化もあれば、正式な「社内制度の見直し」に発展したケースもあった。

 継続的な業績の発展には「付加価値」の観点が大切になる。クリエイティブな成果やイノベーション創出は確実に保証できるものではないが、そこを射程に入れることで日々のトラブルは激減する。結果として「具体的施策」などは比較的スムーズに推進できるようになる。
 ただ漠然と仕事を「処理」する感覚だった職場に、「付加価値を生み出す」という目的意識が浸透すると、組織の生産性(TFP:全要素生産性)は自ずと高まっていく・・・

・・・というのが、これまでに描いてきたシナリオになる。改めて全体像にまとめたことはなかったが、ぼくの経験上は「やればできる(不可能ではない)」ことになっている。表向きはデジタル関連のサービスになるが、本質的な成果を提供するにはこういった取り組みを避けて通ることはできなかった。

 仕組みの見直しやワークフローの構築は、フィードバック制御の回路を整備するようなもので、正しい仕事の進め方をすれば「うまくいくのが当然」に感じられる。少なくとも現場レベルでは着実に成果を出し、ぼくの特技とされてきた。

 その評判から仕事先を紹介されることもあったが、整えた仕組み(理)がうまく回って現場で支持されても、「最終的な」評価が得られる保証はない。そこの課題をクリアするには、別の領域での働き掛けも必要になるため、途端に「不確かで難しく」感じられる。

 そこに「分断」が生じることで、プロジェクトの失敗は必然となる。うまくいっているときは「ソフト(情)とハード(理)」双方からのアプローチが連携して機能していた。