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チームの役割とコミュニケーションのフロー

第1部:中国におけるマネジメント体制と課題china_title1.チームの役割とコミュニケーションのフロー

日本の案件を中国のスタジオで制作する場合、図のような体制になります。青が日本人、赤が中国人で、頭が青くて身体の赤い人がコミュニケーションの橋渡し役をする中国人バイリンガルです。現地のマネージャー層は「株主・金融機関」「顧客・市場」「社内・従業員」と相手によって3つの顔を使い分けています。

経営の本によく出てくる話で、同じ事業計画でも、社内で従業員に説明する場合と、投資を募る場合、融資を引き出す場合では説明の内容が変わる・・・というものがあります。嘘ではなく、あくまでも「方便」ですが、言葉や文化が異なる外国人とチームを組んで仕事をする場合、このニュアンスの使い分けはマネジメントの本質的な課題になります。

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多くの場合、日本の本社や親会社が株主で、そちらに対する報告はポジティブな内容にフォーカスされます。仮に業績が芳しくなくても回復材料をアピールして支援を得る必要がありますから、現場の抱えている問題点が日本サイドに正しく伝わらない傾向があります。
また、取引先など市場に対しても、ネガティブな要素は排除して好調さや成長の可能性を前面に押し出します。これは営業戦略としては当然ですが、現地の体制が発展途上であるなどウィークポイントも伝えて、受注後のトラブルを防ぐバランス感覚が求められます。
一方で社内の従業員に対しては、生産性や品質管理のレベルを日本並みに引き上げていく必要性、現地における経費や人件費を抑えていく観点から、現実を直視して厳しく引き締める必要があります。

これらは日本人同士で、ある程度の共通認識の上では「方便」で済みますが、国籍の異なる従業員をマネジメントしていく上では「認識の温度差」を把握しておかないと、日常業務の足をすくわれます。特に中国では、評価と金銭的報酬を直結して考える傾向が強いため、会社が軌道に乗ってきたのに昇給を抑えられることには必ず反発が出てきます。従業員との信頼関係が希薄な場合、悪意のある情報操作と勘ぐられて労働争議のようなやり取りに発展する場合があります。

また、対外的な情報発信と社内への業務命令が入り乱れる状況では、定期的に従業員のベクトルをチェックして揃えておく必要があります。ここを疎かにすると、現場の最前線で喧々諤々の議論が起きてしまい、足並みの乱れからロスが大きくなります。

そこに日本から現地の実情に合わない指示が飛んで来ると、もう収集がつかなくなります・・・ただ混乱を制御するだけで毎日が過ぎてしまい、目立った成果もないままマネージャー層、調整のフロントに立つバイリンガルから疲弊していきます。

通訳や翻訳を介した目線合わせには非常に労力を費やしますが、いったん混乱が生じれば収束させるまでに何倍もの労力を要します。現地のマネージャー層は情報発信に対して、IRや広報・プロモーションといった意識で取り組んでいく姿勢が求められます。

次に組織の運営上、重要なポジションでコミュニケーションのキーマンとなる「ブリッジ機能」「スタジオマネジメント機能」「人事・採用・次世代リーダー育成」について、それぞれの役割における課題を整理してみます。

CG制作現場における中国人のマネジメント(序文)

china_title 2006年から中国に通うようになり、4~5年の実務経験を経た頃に、アジアITビジネス研究会より講演の依頼を頂きました。中国の一部分しか見ていなかったため、あくまでも自分自身の経験談として・・・ということで資料をまとめてお話をさせて頂きました。
その際、講演の冒頭で「中国ビジネスを読み解くカギ」として、以下のふたつのキーワードを紹介しました。

  1. Diversity 多様性 ・・・ 相手との違いを受け容れて、お互いに尊敬の念を持つ。
  2. Media literacy メディアリテラシー(Journalism ジャーナリズム?)・・・ 表面的な印象に捉われず、背景にある本質を読み解く。

その後も中国ビジネスの現場で似たようなトラブルを繰り返し見聞する中で、自分がまとめた内容はそれなりに的を得ていたと再認識して、関係者と共有する機会がありました。

昨年は尖閣諸島を巡る領土問題で反日デモがあり、その狭間で相互理解の乏しさを残念に感じながら、双方に訴えたいことが多々ありました。俯瞰的に考えれば、それは日中間に限った問題ではなく、多国籍ビジネスでは常に同様の課題に直面するものだと感じています。
他にも日米の共同制作や、日中米の合作プロジェクトに参加した経験も踏まえて、当時の講演資料を解説する形で内容を紹介させて頂こうと思います。

中国で長期出張や現地駐在などをされている方、また海外ビジネスに果敢にチャレンジされている方のお役に立てれば幸いです。(2013.02.01.掲載)